情報風景

※本記事は、2019年6月に執筆、10月に加筆、2020年2月に訂正・再加筆、7月に校正。第一部 完。
コンサートでもない、映画でもない、SFでなくもない 「HTML劇場」
──

ctl-e
情報風景インスティテュート株式会社

Presents

(開演のブザー 3sec.)



Human Noon

 Air Klazz Brothers & Cuba Percussion(2004)5:46



情 報 風 景、それは、風のささやき──


情=情け

報=報われる=知らせ

風=Air=大気(窒素、酸素、水、アルゴン、二酸化炭素)×地球の自転・公転(The Sun)

景=(第一幕第一)景




日本列島

缶ビール1本、かみさんと分け合って、互いに真っ赤になります。我が家の冷蔵庫には、牛乳、烏龍茶(SUNTORY)、果実水(Asahi、KIRIN)、Coca-Cola、ついでに、アイスキャンディーが常備されています。底値を熟知(!)している、かみさんが、あちこち、回って仕入れてきます。感謝(こにに、exclamation mark 入れた方がいいのかな)。お気に入りのグラスに氷を5個(五大大陸)入れて、さて、何を飲むかなと、いっとき思案し、氷の上(地球)に注ぎ、HOPE とマッチを持って、そんときの気分次第で、台所の換気扇の下、もしくは、庭に出て、雲を見上げたり、星や月、流れ星を眺め、雪景色、鳥たちや蛙や蝉の声(地球の音楽!)、グラスをかたむけます。しあわせ、これ以上、なにをのぞむか。外出先では、自動販売機は使わず、スーパーマーケットに立ち寄ります。やっぱ、グリコ。

73円

ざっと4千の、大小さまざまなの島からなる日本列島は、ハワイなんかより、よほど、棲みやすい場所だと思います。春夏秋冬はハワイには、ありません。温帯・海洋性気候のおかげで ── 春 ── 夏 ── 秋 ── 冬 ── 高い山々のおかげで、きれいな川、おいしい水、水田、畑。きれいな海、魚。ヒトが生きるのに必要なのは、空気、水、若干の食料と、ねぐら。

環日本海

日本列島は、ユーラシア大陸の東端の沿岸沖にあって、東西3千km、南北3千km(北緯20度から北緯46度)、面積38万平方km、そのうち75%が山地。高い山々が連なる山脈があるため、雨が降る ── 雨は、すなわち、水。水は、命の元。米国が、わざわざ、第四惑星、火星まで探査機を飛ばす、その任務は、命の元である「水」を探すこと ── いまんところ、太陽系内に水がある場所は、地球と、エウロパです。エウロパは、第五惑星、木星のガリレオ衛星の一つ。ガリレオ衛星は、内側から、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストです。

木星

エウロパの表面は氷ですが、その下には、液体の水があり、つまり、地下深くに熱源があり、その熱源は、エウロパにとっての母星である木星の潮汐作用によりますが、海底に熱水鉱床の存在が予測されます。熱水鉱床から噴出する熱水には、有用元素が含まれているでしょう。生命に必要な要素、水と食料と熱源が揃っています。必然的に、生命が存在する、そのための探査が議論されています。

エウロパ

一方、「青い惑星」といわれる地球は、その表面の70%が海です。「地球」と呼ぶより、「水球」が相応しいくらいです。海は塩分を含んでいますので、海水です。我々が日々使っている水は、淡水で、河川や湖沼(こしょう)に存在する地表水。これは、地球上のすべての水のわずか0.01%です。 ── 緯度が高い(北極・南極に近い)と、水は氷りますし、大陸内陸部では降雨量が少なく、砂漠を思い描いてください、水は貴重です。我々の棲む日本列島が、如何に恵まれているか、分かろうというものです。

その日本列島は、火山列島、地震列島です。まず、地球上の火山の10%が日本列島にあります。次に、日本海溝の最も深い所は、エベレストにも匹敵する深さがあります。地殻変動、造山活動が盛んです。小松左京氏が『日本沈没』を執筆した背景のひとつ ── ここで、小松左京氏の、一側面を記します。

小松 左京氏

いとし・こいしの新聞展望(ラジオ大阪 1959年-1962年)構成
『地には平和を』(早川書房主催の第1回空想科学小説コンテスト 1961年)
『お茶漬けの味』(早川書房 SFマガジン 1962年10月号)

日本SF作家クラブを創設(1963年)
歴代会長:星新一、矢野徹、小松左京
『紙か髪か』(オール讀物 1963年)

『情報産業論』(1962年発表の論文)の梅棹忠夫と知り合い、意気投合。
京都の梅棹家で開かれていた「梅棹サロン」に参加し
「万国博を考える会」を結成(1963年)。

題名のない番組(ラジオ大阪 桂米朝とのトーク番組 1964年-1968年 )

『復活の日』(早川書房 1964年8月)
映画化(製作:角川春樹事務所とTBS 配給:東宝 1980年)

万博(日本万国博覧会) 「人類の進歩と調和」 1970年
・岡本太郎(チーフ・プロデューサー)、小松左京(サブ・プロデューサー)
・「太陽の塔」内の展示を、DNAの巨大な模型で、生物の進化を現す
・アポロ12号が持ち帰った「月の石」を展示(アメリカ館)

「国際SFシンポジウム」を主宰。米・英・ソ等のSF作家を日本に招いた(1970年)。
アーサー・C・クラーク、ジュディス・メリル、フレデリック・ポール、
ブライアン・オールディスら。

『日本沈没』(光文社カッパ・ノベルス 1973年3月)
映画化(東宝 1973年)

『宇宙に逝く』(1978年)
LPレコードに収録の、書き下ろしのオーディオ・ドラマ
出演:日下武史ほか

『さよならジュピター』(東宝と株式会社イオ 1984年)

地球の四季

地球の四季

いま 地球のどこかは春 それとも夏
いま 地球のどこかは秋 それとも冬

いま 地球のどこかは朝 それとも昼
いま 地球のどこかはたそがれ それとも夜

小松左京 星新一、小松左京、筒井康隆

水球

地球の質量は、6000000000000000000000トン、公転面の法線に対して、23度半傾けて、太陽の恵みを受けながら、くるくる、1年で、900000000km の「宇宙の旅」。ゼロの数が間違ってたらゴメン。ここで、一時停止。 こんな素晴らしい星に生まれ育って、それだけで、仕合せじゃん。「苦痛」は、人の間で創り出しているんです。太陽から出た光が地球に届くまで、8分19秒(パッと光って、それ行くぞ)。この類の数字は、一度覚えたら、忘れようもない。なお、地軸の歳差運動の周期は約2万6千年。かつて、北極は南太平洋上に、というか、あちこちに動いた。北極星というのは二重の意味で誤り。ひとつは、前述のとおり。もひとつは、北半球の思い込み。白亜紀は、ついこの間のこと。約1億4500万年前から6600万年前。恐竜絶滅 ── つまり1億年生き延びた。人類は? ジュラ紀から続く中生代の後期 ── 「後期」は、こういう文脈で使ってね。地球ができたのが45億年前、生命は38億年前。大気はほぼすべて二酸化炭素だった。38億年前に生命が発生、まずは、いまでいう植物が二酸化炭素を食べ、酸素を出した。植物という命にとっては、酸素は廃棄物です。

さて、そんなわけで、恐竜が栄えたのは、二酸化炭素が豊富にあったから。いま、植物は飢餓状態 ── 戦時中に、食べ盛りだった小松左京の、言の葉 ── 「植物さん、かわいそうに!」。食物連鎖。地球上の植物全体の質量は、1兆トン。

20世紀半ばから始まった宇宙開発の過程で、地球の周囲には、地磁気によって「バンアレン帯」が形成されていることが確認されました。惑星探査では、木星、土星、天王星にも、その存在が確認されました。地球上の生命は、バンアレン帯と大気によって守られています。太陽からの太陽風(プラズマ流)や、宇宙空間からの宇宙線、すなわち放射線が地上に降り注ぐことがないのは、地磁気と大気があるからにほかなりません。

タバコの原料は、ナス科タバコ属の煙草、つまり、葉っぱです。ヘビースモーカーだった小松左京氏の名言を紹介しておきましょう。「医者は、タバコは体に悪いというけどさ、生きているのが一番身体に悪いぜ」。

日本列島は、あと、十万年は沈みませんので、ご安心あれ。しかしながら…

情報 ?

梅棹 忠夫 氏 の著作から、趣旨を引用します。

・情報産業論(1962年)
・情報の文明学(1988年)

精神産業

農業の時代から工業の時代へ、そしてさらに情報産業の時代へという、文明史的変化。C・G・クラークによる三分類、すなわち、第一次産業(農林水産業)、第二次産業(鉱工業)、第三次産業(商業、運輸業、サービス業)が、しばしばもちいられるが、しかし、工業の時代とは、じつは商品生産の時代にすぎないので、どうもおかしい。

食べることを産業化し、人間の労働の産業化を行い、その次に、人間の全活動のなかで「精神」こそは、最も組織化の後れている部分であるから、近代的工業生産のゆきつくはてに、精神産業が展開していき、情報産業になる。

粗雑な文明

ビットとよばれる情報の単位で情報量の測定は可能だが、量を見ても意味がない。情報産業化は工業化の問題点から起きた。近代工業は生産方式としてはきわめて粗雑のものであって、その大部分はサイバネティックスでいうところのフィード・バックの機構さえもたない。大量生産、大量販売、大量消費という粗雑なやり方の文明だ。

それが、文明の質が細かく精密になってきたため、消費のほうの欲求も個別化するし、生産のほうもそれにあわさなければならない、という多様性の時代になった。最低の機能を充足すればよいというかんがえが否定されたというべきだろう。

無意味情報

情報には、軍事情報も産業情報も、その情報を得たものに大きな利益をもたらすという面がある。他方で、そのような利益をもたらさないような情報も存在していて、現実の世界の情報の大部分が、この種の無意味情報である。

自然もまた情報であるからこそ、観光という情報産業が成立するのであり、情報を送り手と受け手に分類するのではなく、情報はあまねく存在する。世界そのものが情報であると考えるしかない。従来型の目的の想定だけではうまく行かない。

品質がよければ見かけはどうでもいい、デザインはそのうわべをかざる見せかけにすぎない、という発想は否定され、その製品に付加された情報的価値こそが品質と受け取られている。腕時計はファッションの道具という面が強くなった。

生物体における非合目的性

こういう時代には、生物体における非合目的性、つまり、生物体は、すべての部分が目的論的に解釈できるものではない、という発想が参考になるかもしれない。明確な目的概念でその存在を説明することはむつしいともいえる。

時計のファッション性を、目的論的な発想で説明することは難しい。時計としての構造をもち機能をもっているというだけでは十分ではなく、従来考えられていた目的以外のことも可能になるかもしれない。それがファッション性だろう。

目的以外の可能性が確立されたとき、種々雑多、ありとあらゆる情報がそれにのりはじめる。つまり、機能や構造をもう一度再定義してみることが重要なのだろう。再定義の結果、新たな付加価値をつける可能性が見えてくるだろう。


なんだか、よく分かりません。

火星と木星のあいだには夥しい数の小惑星からなる帯が存在し、そのなかでも、お名前のついた小惑星があり、6983番は「Komatsusakyo」と命名されました(2002年)。


小惑星「Komatsusakyo」

「人類は情報網が密になると、精神的に傷つきやすく、鋭敏になる。21世紀の現在は、もっと傷つきやすい。しかし、だからといって手をこまねいているわけにはいかない」

── ついでながら、小惑星2001番は「アインシュタインとかいう野郎に割り当てられている」とは、クラークの言。(小惑星4923番「Clarke」)


…… おまけながら、日本を沈没させたのは、「おい、ここらで、少しは、あたま、冷やせよ」と、星 新一氏とつるんでの、ジョークだったのかなあ、なんて、思うに到ることもございますが、これはまあ、耄碌した筆者の妄想です。庭に砂場を作るとか宣言してから、もう七年。なに考えてるのと、かみさんのおこごと(こにに、exclamation mark 入れた方がいいのかな。さいわい、かみさんは feature phone 止まり。それをいいことに駄文を連ねましたが、こんくらいの私事は許されるべきでありましょう。)。


phone

1970年-1971年 SHADO最高司令官・ストレイカー


ガラス玉演戯

ヘルマン・ヘッセ 『ガラス玉演戯』(1943年)

── 東方巡礼者たちに

序章 ガラス玉演戯

演戯名人、ヨーゼフ・クネヒトの伝記の試み、
クネヒトの遺稿を添えて   (H・ヘッセ編)

ヨーゼフ・クネヒトの自筆の翻訳

 ……ある点では、そしてまた思慮の浅い人々にとっては、現実的に存在しないもののほうが、存在するものより、ことばによって表現するのに、容易であり、責任を伴わないかもしれないが、敬虔で良心的な歴史家にとっては、まさにその反対である。すなわち、ある事物の現実的存在は証明することができないし、ほんとうらしくもないとしても、敬虔な良心的な人々が、それをある程度存在するものとして取り扱うことによって、存在と生起の可能性に一歩近づけられるような事物がある。そういう事物ほど、ことばで表現しにくいものはないが、また、そういう事物ほど、人々の目の前に示してやる必要のあるものはない。     アルベルッス二世

クランゴールおよびコロフ出版
精神の結晶に関する論文、第一巻第二十八章

フェユトン

こうして、新聞のフェユトンとまったく同様に、意味を失ったばらばらな教養価値や知識の断片の大洪水の中をもがいていた。簡単に言えば、すでにあの恐るべきことばの平価切り下げの直前にあったのである。それはまず、まったく秘密なごく小さいサークルのあいだに、英雄的禁欲的な反動を呼び起こし、それがまもなく、おもてだって強力になり、精神の新たな自律と品位を回復する端緒となった。

演戯名人、ヨーゼフ・クネヒトの伝記

ヘルマン・ヘッセ 1955年 ヘッセの筆跡

3001年終局への旅

1945年に人工衛星による通信システムを提案し、90歳で亡くなるまで、人類の未来を楽観的に描いてきた、アーサー・C・クラーク。

『2001年宇宙の旅』 2001: A Space Odyssey (1968年)

『2010年宇宙の旅』 2010: Odyssey Two (1982年)

『2061年宇宙の旅』 2061: Odyssey Three (1987年)

『3001年終局への旅』 3001: The Final Odyssey (1997年)

愛犬を腕に
アーサー・C・クラーク
ctl-e

アーサー・C・クラークと小松左京

HOW THE WORLD WAS ONE:
Beyond the Global Village
by Arthur C. Clarke

地球村の彼方・未来からの伝言

序文:1991年4月20日 スリランカ、コロンボにて アーサー・C・クラーク
あとがきにかえて:小松 左京

アーサー・C・クラーク (1917年12月16日 - 2008年3月19日)

小松 左京 (1931年1月28日 - 2011年7月26日)



リチャード・ドーキンス

Richard Dawkins (1941年3月26日 -)

YouTube:Richard Dawkins Teaching Evolution to Religious Students (52分26秒)

なに喋っているのか分かりませんが、いい声しています。こまったときには、声優にでも(ダニエル)。

YouTube:Militant atheism|Richard Dawkins (31分07秒) 字幕あり

「21世紀のヘッセ」たる詩人、中島みゆきさんは、真の詩人がそうであるように、科学に対し、深い洞察をお持ちでしょう。真の科学者も、また、詩人に違いない ── ドーキンスの文体に溢れかえるものは、センス・オブ・ワンダー、彼もまた詩人であります。中島みゆき『昔から雨が降ってくる』(2007年)は、ドーキンスの著書から得たインスピレーションか ── 詩人は言の葉の魔術師。「雨」は「自己複製子」、この惑星では……


『盲目の時計職人』(1986年) 第5章

 外ではDNAが降っている。私の庭のはずれ、オックスフォード運河の土手には、ヤナギの大木が一本あって、綿毛の生えた種子を空中に播き散らしている。風向きはとくに定まらず、種子は木からあらゆる方向に吹き流されている。運河の上流も下流も、双眼鏡で見渡せる限りの水面は漂う綿毛で白くなっていて、きっと別の方角でもほぼ同じ範囲で地面は綿毛に覆われているにちがいない。綿毛はほとんどセルロースでできていて、遺伝情報であるDNAを収めたちっぽけなカプセルをさらに小さく見せている。DNAの体積は全体からみればわずかなものにちがいないのに、なぜ私はセルロースではなくDNAが降っていると言ったのだろうか?
 ……向こうで指令が降っている。プログラムが降っている。木を育て、綿毛を播き散らすアルゴリズムが降っている。これは隠喩ではなく、明白な事実である。


人類の祖先は、たかだか、500万年前。人間の歴史? 文化? 文明? たかだか、5000年、1万年にすぎない。エレクトロニクスにしたところで、マイケル・ファラデーが、電磁場の基礎理論を確立してから、200年ほど。38億年の生命の歴史のなかでは、「毛ほどの」ものさ。

象にたかる蟻(アリ)という陳腐な通り言葉がありますが、そんなもんじゃありません。日本列島の南端から北端まで、ざっと、3000kmを、蟻が2匹、連れだって散歩したとしたら ── 38億年の生命の歴史と人間の歴史(とやら)の比に相当するでしょう。

写真では、あんまり違いませんが、実際の木星と、実際のたこ焼きくらいの比になりましょうか。小腹がすいてきた。(かみさん「耳毛とろうか、刺抜きで」「うん、たのむ」内心「女心はなぞだなあ」かみさん「なんか言った?」)

たこ焼きの、ほぼ中心(焼き方による)にはタコがあります。木星の中心は炭素。高温・高圧によって結晶になっています。炭素の結晶──すなわち、ダイヤモンド。推定質量は少なく見積もって、10000000000000000000000000000グラム。お好みに応じて、カラットでいえば、(「誕生石、ダイヤモンドなんだけどな」「…」)。

木星と、その衛星の影 たこ焼き、30個

『昔から雨が降ってくる』(中島みゆき 2007年)

♪僕は思いだす 僕の正体を

『歌旅 中島みゆきコンサートツアー2007』(DVD、Blu-ray)に収録された同曲は、中島みゆきさんの歌唱はもちろん、そのさりげない仕草と、みゆきさんが舞台を去ったあとの、瀬尾一三さん編曲によるエンディングが心地いい──照明やカメラワークにも惚れぼれ。『with』も、また然り(Guitar 古川望)。

♪同じ雨にうなだれたのだろうか

遭遇その三 六五〇〇万年前、メキシコ湾
──それは、大気にさしわたし十キロメートルに及ぶ穴をうがって垂直に落下し、発生した熱で大気そのものまでが燃えあがった。
……酸化窒素の雨が空から降りそそぎ、海洋を酸性に変えた。焼きはらわれた森林から出た煤煙の雲が何カ月ものあいだ太陽を蔽い隠して空を暗くした。世界的に気温が急低下し、最初の大変動を生きのびた動植物の大半を滅ぼした。数千年をしぶとく生きぬいた種もあったが、巨大爬虫類の支配は結局終わりを告げた。

『神の鉄槌』(アーサー・C・クラーク 1993年)より

『銀の龍の背に乗って』(中島みゆき 2003年)

♪僕はこの非力を嘆いている わたボコリみたいな翼でも

動物の皮膚は常に剥がれ落ちていて、室内の埃の大半は、我々ヒトのそれで、集まって「わたボコリ」に、詩人だなあ──掃除がお好きなのかも。きっと、そうだ。

新聞。シングルCD「荒野より」発売

これは、2011年9月1日の新聞(右下の「荒野より」にも着目)ですが、
ドーキンスに戻りましょう。人間は犬や猫と同じ動物、ヒト科のひとつ。たまたま、ほかのヒト科が絶滅したため、ホモ・サピエンスと自称し偉そうにしている ── 桃、栗、柿などの植物、そのまた祖先の細菌の祖先と同じ祖先から「自然選択」によって進化してきた、その途中──。何回かの氷河期、ときには、全球凍結のなかにであってさえ。よって、この先、何十億年と、全生命は、絶滅を繰り返しながら進化を続ける。生命の歴史をみれば明らかなように、この先、ヒトは、もはや、いない。

「ヒト」が特別な存在だなんて、進化生物学者に言わせれば、非連続精神もいいところ、分かりやすくいえば、妄想だぜ。──ある高名な生物学者が、憤慨して怒鳴るには「ああ、言わせてもらえばだ、動物のほとんどは昆虫さ。これで、いいか? 研究に戻りたいんだ!」。地球上の植物全体の質量は、1兆トン。動物全体の質量は、100億トン──そのほとんどが、細菌、うたがわない虫、さびしがる魚です。


『神は妄想である』(2006年) 第6章 道徳の根源

 世界のなかで生き残る単位とは、この階層秩序のなかで、自分と同じレベルにいるライヴァルを犠牲にして生きのびることに成功したものである。厳密にはそれこそが、この文脈で利己的という言葉が意味するものである。問題は、その作用の舞台となるレベルはどこか、ということだ。力点を正しく、後ろのほうの単語(遺伝子)に置いた、利己的な遺伝子という考えの趣旨は、自然淘汰の単位(つまり利己主義の単位)は利己的な個体ではなく、利己的な集団でも、利己的な種でも、あるいは利己的な生態系でもなく、利己的な遺伝子だということにある。


個体は必ず死にます。DNAという分子も同じです。ところが、遺伝子(という情報)は、何百万世代に渡って生きのびていきます。突然変異が「自然選択」にさらされ生き残ったとき、長い長い時間のなか、漸進的(ぜんしんてき)に、累積されます。その過程を進化と呼びます。

──「自然選択」は、ダーウィンが『種の起原』(1859年)のなかで使っていることば(natural selection)です。


『進化の存在証明』(2009年) 第10章 類縁の系統樹 分子的な比較

 これは本当に驚くべき事実で、ほかの何にもまして明瞭に、すべての生物が単一の祖先から由来するものであることを示している。遺伝暗号そのものだけでなく、第8章で扱った、生命活動を営むための遺伝子/タンパク質というシステム全体が、すべての動物、植物、菌類、細菌、およびウイルスを通じて同じなのである。


動植物のお名前はカタカナで表記することになっています。これは、生物学の基本、ところが、人間だけ、「人」とか「人間」と書きます。これは、明らかな誤りです。人間はヒトと書くべきです。1人、2人、といった単位なら、まあ、太っ腹をみせて許す。本来なら、1匹、二匹、だけど、それじゃあんまりだ、ということで。

「人間」は「人」・「間」と書きます。「間」は難解です。「時間」「空間」が難解なように。「一間」なら尺貫法で約180cm、「世間」と来たら、これは、もう、『人間失格』(太宰治 1948年)。ついで、未完の遺作『グッド・バイ』。──人間はつらいよ。弱肉強食は、ただの言葉にすぎない! 虚だ。

星新一氏いわく、「新聞連載などしなけりゃ、死なずにすんだと、おれは思うがね」。優しいね。人間失格をヒト失格と置き換えれば、ネコ失格があり得ないように…。人間はヒトであり、すなわち、生物であるという、極めて当り前の……


『復活の日』(小松左京 1964年) 第一部 第四章 5 八月第二週

 「ヘルシンキ大学の文明史担当ユージン・スミルノフ教授です……私のことを、知っておられる方が、まだのこっているとは思いません。また、どなたかが、まだ生きていて、私のこの放送をおききになっているとも思いません。──しかし、私はかたらずにはおられません。──今日は、私のラジオ講座の日です。──これが最後の……あらゆる意味で最後の講座になるでありましょう。──さいわい、この放送局は、自家発電によって、まだ電波を出しているようであります。

 「私の本日の講義の主題は簡単であります。──ヨーロッパ各地の大学で、十年にわたって講義をつづけながら、私は一度もこのことをはっきりとは申しませんでした。あたり前すぎるほどあたり前であり、それは単に出発点の、0(ゼロ)にすぎず、いくらやっても仕方のないことでした。──そしてまた、それは私の専門とする文明史の決着点であります。──それは、人間もまた生物であり、生物にすぎない、ということであります。

復活の日

つい、小松左京に寄り道をしました。ついでに、もひとつ、ふたつ、道草を…
ドーキンス先生もおっしゃっています。寄り道もしないで、何の人生か。


『筆のすさびと落穂拾い』(ショーペンハウアー 1851年)

…ところで、幸福な生活とは何かといえば、純客観的に見て、というよりはむしろ、〔この場合、問題は主観的な判断の如何にあるのだから〕冷静にとっくりと考えてみたうえで、生きていないよりは断然ましだと言えるような生活のことである、とでも定義するのが精一杯であろう。…

ショーペンハウアー

バートランド・ラッセル(1872年5月18日-1970年2月2日)

映像と音声 百害あって一利なし(3分25秒) 字幕:辻憲行 氏


ドーキンスに戻りましょう。


『利己的な遺伝子』(1976年) 2 自己複製子

 同様に、自己複製分子を「生きている」といおうというまいと、それらの分子のたどった道は、おそらく、私が述べているのと多かれ少なかれ似たものであったろう。ことばというものはわれわれが自由に使う道具にすぎず、またたとえ「生きている」というようなことばが辞書にあるからといって、そのことばが現実世界における何か明確なものを指しているとは限らない。人間の苦難はこういったことを理解していない人があまりに多いために生じているのだ。


さて、役者が揃ってきましたな。


音楽(幕間)

Cavalleria Rusticana INTERMEZZO
Georges Prêtre(2009 Chorégies d'Orange)

4分56秒 冒頭22秒は、指揮者が唇に指を当てて…


カール・セーガン(1934年11日9日-1996年12月20日)

ドーキンスの敬愛する天文学者カール・セーガンは、地球外知的生命体の探索、圏外生物学を開拓しました。ボイジャー計画を推進し、いま、ボイジャー2号は、太陽系の圏外── 「圏外」は、こういう文脈で使ってね──を飛行中です(2018年11月5日に太陽系を離脱、ただ、あてどのない孤独の旅のさなか)。ドーキンスの計算によりますと、この銀河系(天の川、The Milky Way)には、まず、地球人だけだろう、と。

カール・セーガンが出演した、
テレビ番組『コスモス(宇宙)』(1980年)の背景音楽
Alpha Vangelis(1976年) 6分50秒

Vangelis(ヴァンゲリス 1943年3月29日-)


『利己的な遺伝子』(1976年) 3 不滅のコイル

 われわれは生存機械である。だが、ここでいう「われわれ」とは人間だけをさしているのではない。あらゆる動植物、バクテリア、ウイルスが含まれている。地球上の生存機械の総数をかぞえあげることはとうていできない。…われわれはすべて同一種類の自己複製子、すなわちDNAとよばれる分子のための生存機械であるが、世界には種々さまざまな生活のしかたがあり、自己複製子は多種多様な生存機械を築いて、それらを利用している。…DNAのいとなみは、まかふしぎである。


虹の解体(1998年) いかにして科学は驚異への扉を開いたか

 私の初めての著書『利己的な遺伝子』を出版してくれた外国のある編集者がいった。あの本を読んだあと、冷酷で血も涙もない論理に震撼して三日眠れなかった、と。別の複数の人間からは、毎朝気分良く目覚めることができますか、という手の言葉をもらった。…このように、救いがない、無味乾燥だ、冷たい、といった非難は、しばしば科学に対して投げつけられる言葉である。科学者の方もわざとそのような表現を好む。…本来、生きる意味に満ちた豊かな生を科学が意味のないものにしてしまう、という非難ほど徹底的に的外れなものもあるまい。そういう考え方は私の感覚と一八〇度対極に位置するものだし、多くの現役の科学者も私と同じ思いだろう。しかし、私に対するそのような誤解のあまりの深さに、私自身絶望しかけたこともあったほどである。だが本書では気を取り直し、…ここで私がしたいのは、科学における好奇心(センス・オブ・ワンダー)を喚起することである。というのも、私に対する非難や批判はすべて、好奇心を失った人々に由来しており、それを考えると心が痛むからである。私の試みは、すでに故カール・セーガンが巧みに行ったことでもあり、それゆえ彼の不在がいまはいっそう惜しまれよう。


ミドル・ワールド(中くらいの島)

われわれは、何十億年という長い長い時間や、光が1メートルを進む短い短い「時間」、また、分子や銀河系といった極微・極大のスケールの「空間」に、生きてはいません。せいぜい、数十年という時間と、身の丈の長さの世界に生きており、それで困ることは、ない。「起きて半畳、寝て一畳」。

地質学的時間の中で起きる「進化」が何の実感を伴わないように、また、光は「波であり粒である」とする、量子力学のなぞなぞ、太陽系の圏外を航行中のボイジャー2号から電波が届くのに20時間かかると知っても、ふうん、です。それで、平気なのは、なぜでしょう。

ドーキンスが、「ミドル・ワールド」という概念を提唱し、真相を明らかにしてくれます。──われわれ動物は、数年から数十年という時間と身の丈の長さの世界、すなわち、「中ほどの世界」(middle world)で生活し、進化してきたからだ、というものです。なるほど。明快だ。

♪3つ隣の 中くらいの島に着いて
──『スクランブル交差点の渡り方』(中島みゆき 2012年)

途方もない時間や空間は、生きるうえでは、いっそ、お邪魔むしであり、そのむしは自然選択でふるい落とされます。それが進化というものです。生存競争ではなく(Don't be fooled.)、自然選択が累積する。 なが──────────────────い、じかんをかけて。

われわれヒトも、進化の過程にある生物のひとつです。

では、さらに、いったい、なぜ、科学は、ミドル・ワールドという、いわば「隙間」を、これまで押し広げて来たのか、そして、さらに押し広げようとしているのか。リチャード・ドーキンス「いかにして科学は驚異への扉を開いたか」、好奇心、驚きの心── sense of wonder

科学は考え方です。好奇心を発端とする「疑問」を、妥当な「問い」とし、仮説を立て、論証と実証を繰り返し、反証を求め、それに応じて「問い」の立て方自体を問い直し──出直す。

その成果の一例、物質が原子でできており、また、南極大陸が南半球にあること、その氷の下にも生命(細菌、その細菌の全質量は、ヒト科の全質量に匹敵するのではなかろうか)が暮らしていることを疑う人は、いまや、だれもいない。そう、そこまで到達すれば、これは「科学」だ。道具は、論理と数学──このようにして得られた知識は膨大だ。好奇心に発し、驚異に至る。理性の時代といわれる18世紀この方、わずかな世紀を越えて──。

「正」という文字は五画です。これは数学であり、論理(真か偽)です。そして、科学は、限りなく真実に近いことが実証された理論体系です。水を冷やせば、氷になると。

電子工学という応用技術、その基礎となる科学の一分野「電気」にしたところで、マイケル・ファラデーが、電磁場の基礎理論を確立してから、まだ、わずか、2世紀。ファラデーに続き、マクスウェルが、二つの偏微分方程式として数学的に整理し(1864年)、アインシュタインの光量子仮説(1905年)へと続く。

建設された知識体系、そのごく一端をみるにつけ、どうして、そこまで、分かったのか、と、驚異の念に打たれる。──いや、それだけじゃない。そもそも、なぜ分かることが「できる」のか──ましてや──その認識を「数式でもって表現でき、それを正しいとする」としていいのか、うむ、Mission Impossible だ──いったい、なぜ、どうして、「中ほどの世界」の住人たるヒトに、──そう、そのこと自体が驚異ではないか、このこと自体が……

ファラデーの言葉
得体の知れぬ電気が、何の役に立つのですか、と、問われ、
生まれたばかりの赤ちゃんが何の役に立つとお思いですか。

アインシュタインの言葉
The most incomprehensible thing about the universe is that it is comprehensible.
宇宙について最も理解しがたいことは、それが理解可能だということである。

アーサー・C・クラークの言葉
そして銀河系全域にわたって、精神以上に貴重なものを見出すことができなかった彼らは、星々の畑の農夫となり、──私は待たないことに決めた。

ヘルマン・ヘッセの言葉
それがまもなく、おもてだって強力になり、精神の新たな自律と品位を回復する端緒となった。

science is diamond's 刀だ──copyright.


理性の時代

みるところ、理性の噴射推進装置は、ディヴィッド・ヒューム、その人。

バートランド・ラッセル

バートランド・ラッセル『図説・西洋哲学思想史 ―― 西洋の知恵(下)』(1959)

なんだか、よく分かりません。何回読んでも、難解なことは、いいです。若いころとは違うんです。


リチャード・ドーキンスにひとこと申し上げたい。脳の働き、その比喩として、電子計算機を持ち出すのは、科学的的でない。公正を期していえば、比喩するものが「ない」のが「脳」であれば、そしてそうなのだから、これは致し方ない。

なお、そこで god を持ち出す人々に、戦闘的無神論で追い詰め、逃げ場を一切残さない。──やるじゃねえか(ジョー・高橋)。痛快だ。

ついでに、小松左京にもひとこと申し上げる。底知れぬやさしさゆえか、10万年に及ぶ Zeitgeist か、もしくは、ジョークなのか、情けないと、"My God, it's full of stars!"、宇宙に逝く…。 追伸、情は、(ジョー)は、本編で出演します(果てしなき情報の方に copyright.)。なお、前述、太文字のヨーゼフも同様。


ctl-e
My God, it's full of stars!






本編の予告

(もしくは、イントロダクションのあとがきにかえて)

電子ライター

この電子ライターの重さは24g、百円ライター18g、マッチ一箱(金鶴)11g。(「秤なら2階にあるでしょ」「あそうか」)ついでながら、マッチ棒の長さは、きっちり、5cm。

電子の半径ってゼロなんだって、量子力学によると。空間的な広がりの無い点電荷と見なすんだそうで、「見なす」ってところが、量子力学なのだろうさ。「あれまっ、そうなの~」(中島みゆきさん風に)。ただし、古典電子半径は、0.000000000003mm だそうな、古典物理学によると。──なお、ゼロの数が間違っていても、当局は一切関知しないからそのつもりで(ミッション・インポシブル風に)。 (「オレンジ色のも食べてね」「え」「…ニンジン」内心「ま、いいか、どうせ、分子の集合だろ」)


電子は半径ゼロ、光子は質量ゼロ。原子は電子によって結合し分子となり、分子はなぜか集まってDNAとなり、そこに遺伝子という情報を載せる。「子」って、偉大だね。「孫」は、もっと、偉大か。実感わかないんだわ。「子」の命令は謹んで従う、これ、生物の基本。そうすりゃあ、ヒト「社会」も、平和なのにね。まあね。

重力
知る限り、難問中の難問は、重力。これまでに見つかっている「力」は四つ。重力、電磁気力、核内で働く二つの力の計四つ。なのに、重力は、まだ、分かっていない。そして、さらにいえば、今後、数世紀の間に、五つ目の力が見つからないともいえない。電磁気力の発見は、わずか、2世紀前なのです。

重力子
2017年8月17日、重力波が直接観測されました。しかし、重力子 (グラビトン Graviton) は、いまだ、未発見のままであります。マッチ一箱11g、謎です。ここは、詩人の出番かもしれません。「♪無限・軌道は真空の川」。中島みゆきさん、「1/5」(副題:五つの頃)という「夜会」を、どうぞ。

CQ CQ



中島みゆき TOUR 2010 アルバムコレクションガムセット

中島みゆき TOUR 2010 アルバムコレクションガムセット(Chewing gum)
37分の1 座標(3,3) 『歌でしか言えない』(1991年) 1. C.Q.



「きょうはお風呂はいるかしら」「はいっとくか」

トム・クルーズ

中島みゆきさんと互角に対するには、この男しかいまい(2004)。






イントロダクション(仮題:33)の書き掛け
本編の主題は、地球工学による全生命(ヒト科を含む)のしあわせ、のつもり
(役者が、あとお二人、足らない…)
本記事は、2019年6月に執筆、10月に加筆、2020年2月に訂正・再加筆、7月に校正、第二部書き掛け...死ぬまで暇さ

文責:服部悦雄(1954年2月- 体重60kg ±2kg) 情報風景インステュテュート株式会社・代表取締役

参考資料

・広辞苑 第七版

・理科年表 2019年版

・ブリタニカ国際大百科事典 DVD-ROM版




33(仮題) ──human noon

登場人物
 モーガン (工学者)
 ヨーゼフ (演戯名人)
 マイケル (元ゴッド・ファーザー)
 チャン・リー (火山学者)
 ヴィンセント (巻き添え人)
 ジョー・高橋 (元宇宙戦闘艇7号パイロット)
 ミシェル・ジェラン (冷凍睡眠中につきアスカが代行 Artificial Existence)

特別ゲスト
 みゆきさん(ほぼ、ナンシーが代行)

舞台
 とき:『さよならジュピター』と『3001年終局への旅』のあいだくらい
 空域:地球とその近傍空間(木星以遠は圏外)

主題曲
 『風のささやき』(2分51秒) Michel Legrand(1968)

科学検証
 アーサー・C・クラーク
 ユージン・スミルノフ教授
 安藤昌山

文体検証
 リチャード・ドーキンス

配給
 HTML劇場 ── https://information-view.co.jp/

著作
 情報風景インスティテュート株式会社

黒幕
  あいつ 152sec.

白幕
  ジョー 220sec.

白黒
  宇宙葬 266sec.

プロローグ

 私は待たないことに決めた。
  ──アーサー・C・クラーク(2061年 赤道上にある重力安定点)


  Der Steppenwolf に捧ぐ


序奏(絶対温度103度) attention please, t≒31min.

宇宙に逝く

湖その1

「うんと早く泳げば、」と彼はせっかちに、少年らしくむきになって叫んだ。「太陽の出ないうちに、ぼくたちは向こう岸に着けるよ。」

 湖は、氷河の水を受けて、盛夏でも、鍛錬を積んだものでなければ、耐えられないほどだったから、切りつけるような敵意のこもった氷の冷たさで、彼を迎えた。したたか身ぶるいをすることは覚悟していたが、こんなふうようにかみつくような冷たさは、覚悟していなかった。冷気は、燃えあがる炎のように彼を包み、一瞬かっと焼けた後、ぐいぐいとからだに浸みこみ始めた。飛び込んでからすぐまた浮かびあがったが、自分を大きく引き離して、泳ぎ手ティトーが先の方にいるのを発見した。しかし、氷のようなはげしい敵意にしめつけられるのを感じた。そして、距離を縮め、競泳の目標に達し、少年の尊敬と友情と魂とをかち得るために戦っているのだと思ったとき、実はすでに死と闘っているのだった。死は彼を追い詰め、彼に組みついていた。彼は、心臓が打っているあいだは、全力をあげて死に抵抗した。
(ガラス玉演戯, 1943)

湖その2

 ──あれは何だろう?
 と開けはなった窓から、水面を見つめながら遠藤は思った。
 ──亀だろうか?

 それは鉛色の冷たい水にみたされ、枯れた森にかこまれた寒そうな湖を、長い水尾をひきながら、はるか彼方の雪におおわれた山脈のそびえる対岸にむかって泳いで行く、一匹の亀のイメージだった。
 それは、どこかで見た事のあるような幻覚だった。しかし、私自身が直接見たものでは、あり得なかった。──私は、その光景を見ているようで、実は誰かが見ている光景であり、私は見られている亀なのだった。孤独で、長い、身も意識も凍りつきそうな、「亀である意識」の前に、対岸に雪におおわれた巨大な岩がせまって来た。しかし、その岩の水際には、大きな、かすかに湯気を放つ洞窟が、ぽっかり口を開け、私はその洞窟にむかって懸命に泳いで行くのだった。洞窟の奥に、何か別の次元のものがあるような予感にせかされながら。
(虚無回廊, 1986-1992)

湖その3

 別の次元は、無い。虚をへて実にいたるだろう。
■ナンシー■ …もう、飽きてきたご様子、帰りたくなってきたのですか。

■ジョー・高橋■ それをいっちゃぁ、おしまいだぜ。
■マイケル■ おれもそうおもう。
■ナンシー■ ひらがながおおくないですか。
■ヴィンセント■ 俺は、巻き添えは、ご免だぜ。一服してくる。

■ナンシー■ どうせ、わたしは無機物ですから。

■アスカ■ 無機物/有機物という分け方は、いかがなものでしょう。
■アスカ■ 言語学および化学において、正しくありません。

■モーガン■ 炭素を特別視した過去がある。
■チャン・リー■ まさしく。Lucy in the Sky with Diamonds.
■ヨーゼフ■ そうして、精神の新たな自律と品位を回復する端緒となったのです。

■ナンシー■ 状況報告。全員揃いました。ヴィンセントは猛毒に晒されながらも無事帰還。
■ナンシー■ 全員、シートベルトを絞めてください。

友達

■ヴィンセント■ いま、イヌンとネコンはどこにいる。
■ナンシー■ イヌンは、座標661x、254yにあって、時速7kmで、なおも加速中。
■ナンシー■ 空腹になれば帰還するでしょう。帰還推定時刻は…
■マイケル■ それはいい。ネコンは。
■ナンシー■ ネコン2は、あなたのひざのうえ。
■ナンシー■ ネコン1は、あなたの左上方3mで睡眠の振り。
■ナンシー■ あなたを見下しています。
■ナンシー■ なお、イヌンは、尻尾振り周波数からみてご機嫌の模様。
■ヴィンセント■ よし、わかった。皆、いいか。
■ヴィンセント■ ネコン2は、いま、ひらりと降りた。
■ヴィンセント■ 相変わらず察しがいい。──発進しよう。
■ナンシー■ ナンシー、了解。ネコン2が床に降りるまでに1秒かかりました。
■ナンシー■ よって、ここの高度は5千km。重力1/5。訂正、再計算中。
■ヴィンセント■ いいんだナンシー。
■ナンシー■ シートベルト、チェックしてください。
■ナンシー■ 3秒後に発進します。
■ヴィンセント■ ナンシー、どうした。字がおおきくなったようだが。
■ナンシー■ わたくしの計算回路を、12進数から十進数に切替。オールグリーン。
■ヨーゼフ■ ハヤブはどこだろう。
■ナンシー■ 例によって、地上の山々を、草笛を吹きながら、徒歩旅行中。
■チャン・リー■ 行こう。

発進!

シガリロをくわえたヴィンセント
地上のカスタリエンを見おろす静かな眼差しのヨーゼフ
島の分布を感慨深げに眺めるチャン・リー
タワー上部の中間ステーションを見上げ、何やら暗算しているモーガン
そういった面々を見つめるマイケル
別回線でデータ伝送を行うアスカ

■ナンシー■ 到着まで73分。禁煙です。しばらく我慢してください。
■ナンシー■ お飲み物、軽食は、となりのラウンジにご用意しています。
■ナンシー■ みなさんの、地上でのご予定があれば、お聞かせください。
■ヴィンセント■ これを一服しながら考える。
■アスカ■ ラウンジも禁煙のもようです。
■ヴィンセント■ む、考えることさえできん。
■ナンシー■ ありがとう、アスカ。了解、ヴィンセント。もう、しばらくの我慢です。
■モーガン■ 計算にミスがないか、中間ステーションのクラークと映話する。
■チャン・リー■ 沈めた列島の、その後の計測データを検討したい。南極も。
■ヨーゼフ■ ラウンジにオルガンはあるかね。
■ナンシー■ ございます、ヨーゼフ。──どういった作品を。
■ヨーゼフ■ なんだっていいんだ。小品を二三曲。

■マイケル■ おれは、ルマン島を駆け抜けることにしている。
■ジョー・高橋■ おれは、愛馬に乗って風と1Gを感じたい。
■ナンシー■ ナンシー、了解。到着は正午です。
■ナンシー■ 到着5分前に、アロハシャツをお配りに上がります。
■アスカ■ 亀は、上層階の湖を、なおも、懸命に泳いでいますよ──私は蛍に会いたい。子にも。

 モーガン (工学者)
 ヨーゼフ (演戯名人)
 マイケル (元ゴッド・ファーザー)
 チャン・リー (火山学者)
 ヴィンセント (巻き添え人)
 ジョー・高橋 (元宇宙戦闘艇7号パイロット)
 ミシェル・ジェラン (冷凍睡眠中につきアスカが代行 Artificial Existence)

ざわざわ。

■ヴィンセント■ いまどこらへんだ。
■ナンシー■ 宇宙圏を抜け、まもなく、大気圏です。
■ナンシー■ 眼下に大洋が見えてきます。

Summer Creation 159sec.

南緯0度、西経185度

I'm as free as I can be
Flying high above the clear blue sea
In a world waiting just for me
Waiting just for me
Mm-mm-m-m-m
My Summer Creation
You have taken me
Far away from all the everyday life
Oo-oo-ooh I am free
There's nothing that I can not do
No one I can not be
In a world waiting just for me
Waiting just for me
My Summer Creation

I'm as free as I can be
Doo-doo-doo-doo-doo
In a lovely world that's mine, all mine
Waiting just for me
Hmm-mmm-mmm
Summer breezes
Whisper softly through my hair
Far away from all the everyday life
Oo-oo-oo-ooh I am free
Doo-doo-doo-doo-doo
There's no one I can not be
In a lovely world that's mine, all mine
Waiting just for me
My Summer Creation




第一章へ

夜会 VOL.13「24時着 0時発」
 Produced by  あいらんど
 DAD      川上源一
 Directed by  翁長 裕
 ©2004 YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS CO., LTD.

ここで、この一曲を、載せたい。
YAMAHAさん、是非とも使わせてください。
お願いします。つきましては、使用料をご請求ください。──515-69

Mirāju hoteru 6:59

そんなホテルがどこにあるのか
誰も確かに見た人がない
どんな造りでどんな色なの
人の噂のたびに違うよ
星がとても近くあって
水がとても近くあって
古い手すりステンドグラス
もしくは障子に映る影の世界
ミラージュホテル
その鍵はありえない部屋の番号
ミラージュホテル
それはもしやあると疑えなくもない
ミラージュホテル
その鍵はありえない部屋の番号
ミラージュホテル
それはもしやあると疑えなくもない

コンクリートの段を昇って
底の底まで降りてゆくらしい
出迎えるのはうつむくベルボーイ
昔見送った少年に似てる
他の部屋はふさがっている
昔からの客が住んでる
行きどまりの駅の壁に
掛かる絵の中から
顕れるレセプション
ミラージュホテル
その鍵はありえない部屋の番号
ミラージュホテル
それはもしやあると疑えなくもない
ミラージュホテル
その鍵はありえない部屋の番号
ミラージュホテル
それはもしやあると疑えなくもない

星がとても近くあって
水がとても近くあって
古い手すりステンドグラス
もしくは障子に映る影の世界
ミラージュホテル
そのはありえない部屋の番号
ミラージュホテル
それはもしやあると疑えなくもない
ミラージュホテル
その鍵はありえない部屋の番号
ミラージュホテル
それはもしやあると疑えなくもない




 先回りして、いまここで、もう一曲、お願いしておく。
 with(2007年)──第一部終幕に於いて

第一章 地球の式 √和

到着しました。地下1階です。時刻は、正午7分前、気温は23度半。──さわやかな風が吹いています。 出口は、幅73mの階段を昇ってください。 昼食は、おのおの、ご気分次第でどうぞ。おすすめは、定食屋88ですが、ただいま満席です。 わかった、ナンシー。buffet で食い過ぎたし、あとで、そう、お八の時間にしよう。

ヨーゼフ──食事の前に、温泉にひたって瞑想しよう。わたくしもご同行してよろしいですか。うむ。


地球の衛星──月

地球の衛星──月 その直径はエウロパとほぼ同じ、表面積は日本列島のおよそ100倍
(流れる薄い雲の向こう、たまたま枝がさしのべる方。2020年8月23日夕方撮影 DSC-RX100)


──つづく (to be continued next month or day,)





「子と母は苦手だ」「なぜですの、ヨーゼフ」「うむ」「何処かの、文献で目にしたのだが」「──女の居ない世界は爽快だろうに、だったか、正確には、後で調べてみよう、たぶん、Nietzsche」「──『いまから、子と女を敵とみなし、全面的応戦体制に、入られて』 は 」「そうしよう、ありがとう、ナンシー」「では、雷雨雲を呼びましょうか、いま、アスカに伝送しておきました」「お気をつけて」

「13分後に、雷雨雲 9sec、1300MVだ、ナンシー」「了解、アスカ」「それで、分かった」「…」「発進の時の、ヨーゼフの眼差し・・・」「カスタリエン島…」「ええ」「質問の嵐」「うん」「ルマン島で、ぶっ飛ばして…、失礼、88キロで走行中の、ヴィンセント に聴いてみましょう」「聴く?」「ヨーゼフのお好きな言葉です」「あとは、まかせてくれ」

「一息いれて、いえ、一服していた様子で」「それで」「ええ」「トランプ・ゲーム」「なるほど、ヨーゼフの硬筆とガラス、お似合いですわ」

「ほかのみんなは、どうしている」「残り、5名、昼寝しています」「じゃ、呼んでくれ」「どう伝えます」「うん、私も、トランプに触りたくなってきた。キャッツアイをやろう、と」「ナンシー、了解」

がやがや

ナンシーとアスカの独白

西の島の湖沼で生まれおちただけのことはあります。ヨーゼフ、──狼と一緒に暮らしたと。 彼を、イヌンまでに、人為進化を...AEではむりだ──。ああ、数冊の小品を著しただけだが──、ドーキンが10秒、無口になったそうです。 そう、A.A. には数語──だけ、触れて、通り過ぎています。────── 「素数工学」、そう呟いただけで、モーガンとチャン・リーが。──いや、彼らはよくやった。7年という短い時間で、しかも、電子河川まで。「待たないことに決めたのでしょう」 ドーキンは、進化生物学と、畳みかける論理で追い詰め、こたえは、

tyosya

いいんだ、ナンシー。

あの島に勝手に生えているイチゴと、イナゴ、炒って食うとうまいんだ。食べ過ぎておなかこわさないでね。氷水も、そりゃ、ごくごく、と。座頭の、いっつぁん の、おまねなんかしちゃてからに。ん。うるさい。 ごめん。 ほんとにもう。 式で、飽きないです、だったんじゃ? ハワイいったきりで、どっこも… … あれっ


居間の今

「暗くない」「うん、少し様子をみてた」「そのへんにころがっていた電球・・・」「なに」「とりあえず、カバー外しとくか」「ね、少し明るくな・・・」「わ、カメムシ」「2個切れてたか」「あした、アサヒで買ってくる、4個、100W、400円せん」「こたつ、そっちに動かして」「…」「ドアの方」…「ね」、「この頃、白熱電球、どこも作ってないんだわ、情けないったら、ありゃしない」、「これで、耳毛」、「家庭円満の投資なのに、、、どこのメーカーも数円を惜しんでからに」、「見やすいでしょ」・・・「どうするんだったけ」ひざはダメ「あそうか」クッション2枚、・・・「すう、すう・・・ぐう、ぐう…」あぁ気持ちいい、「ふうぅ、寝そうになったわ」「よっこらしょと」、「これでよし」   小休止


2階の寝室

時計、午前8時過ぎ、いつもより 4時間早い、もっと寝ていたい、階下へ、換気扇の下、ふー。時計、9時前。2階へ。かくれてこそこそ。階下へ、トーストのにおい、ふー。つくろか、「うん」。キャビン5、左のぽけにいれて、コーヒーもって、庭へ、ふー。小鳥の鳴き声、お天道さん。ひとくちすする。寒い。戻る。qwertyあかん。sum cre. エアコン2機、発射、1℃上昇。24度。

「ちょっと」「散歩」「寒いよ」「15班、一周」3min. 朝食バナナ。

アサヒ、ないじゃんか、一服…、ジョーソンか、モード・デルタ。屋上に。エレベータで降りる。ない。しゃーない、「白熱電球は、いずこに」、いらぬ説明…。シリカ電球?  く 、えい、まとめて持ってこ。約10個、二〇〇4円、めんどくさい、楽天カード出す。カードを作りま? ポイントか、用紙が簡素、老眼鏡、おばさま、おねえさま、わからん。笑顔。許す。お世話さま、で、エレベータ「屋上です、下に…」──いちいち…。12:01 帰着。With(≒7:13)もエンディング。偶然か? レシート渡す「ポイント50だって」。え、なに。白熱電球まとめて交換。

一服、「きのうののこりの、御田たべます」「あ」「うん」。 割り算ができん。2個入りだから、一個百円也か。ま。 「寝る」「あとで」

足も手もあつい。汗が出る、冬でも。マウスの動きがわるい。カインの紙袋もすぐだめになる。さっき、ICC50が届いた中に、緩衝用の紙があった、あれを伸ばして使っていくか。ま、それはさておき、KBDは。

独白。ここんところほんよまなくなった。難解な哲学書を読むと睡眠薬と同じくらい効果があるんだけどな。星野真似して、おくすりのむうだけど、んなもん、どうせ、こむぎこだろ。米の哲学者のダニエルの本、ゆうべは、一枚、はがして、読み始めたが、どうも、あかん、副題の「直感ポンプ」いがいは、ジョークだらけ、しかたない、ごじあってもまあいい、四時方向に、戦闘艇らしき…電気消す。go to 時。小松菜、あいつ、死んではいないな。ふり、しただけか。星は仙人だし、どうせ。ぐう、ちょき、ぱー。

かみさん、応接間のはずだった部屋、あ、障子針かえ。ほり炬燵の配線、床下、忍者屋敷か、それかんがえるとねれる、天井裏にも仕事が。工学、ほかにはなんもいらん。タオル掛け、タイルにビス穴。あくび、ぐう。

貯金? へ。タイムマシンの冒頭数分、あとは、ねむい。あれを観りゃ。旧作はコインが出てきて、wonderful...

「およそ事のはじめには不思議な力が宿っている。それがわれわれを守り、生きるよすがとなる。」
(ガラス玉演戯, 1943)

吐く息  ヨーゼフ  ありがとう  安心した  吸う息

………

ステンレス・パイプの切断。38Φ。五日かけるか。いや。コンテナに行ったらあった。高鋼性アルミベース、5,500回転、makita. ランク・ガンマ。

わかったぞ。わざと、使いにくくしているんだな。いま何世紀だ!

「いつかはこの生命のこまの遊びをもっとよく演じるようになるだろう。笑うことをおぼえるだろう。パブロが私を待っていた。モーツァルトが私を待っていた。」
(Der Steppenwolf, 1927)

おれは、風のささやき──

windmills of your mind






以上、約13曲。thanks.

 こちら、ナンシー。モード・γ 解除しました。ヨーゼフは、くうねるあそぶ島で、子らと、トランプあそびを終えて、子らに、演戯をねだられているところ──ヨーゼフの微笑がみえるようです。「わたくしも仕合わせです」。「めずらしいね、ナンシー」。「tyosya も、いっとき、くるしんだようだが、これで、OK、錨をしっかり下ろした」「ナンシー……」、「──ミシェル・ジェランもな…」



 無口なマイケル──キャッツアイはいい加減にしろ。文句ある奴は……、よし、やれ。

 「ところで」「なんだ」「あなたではない。マイケル。」「くうねるあそぶ島の名付親は」マイケル「おれだ」「そう…」「五つの頃に、おれは、小うるさい母から去って、ファミリーを守ることに全力をあげた」「その末に、ひとごろし」「…」「そうだ、ナンシー」「母だって、つかれる手前さ」「そうでしたの。あなたは、それで、故郷の島へ」「ふむ」「ナンシー了解」「アスカ認識レベル上昇」「ヴィンセント、おれも分かるな」

南緯0度、西経185度(東経180-5度) こちら、ナンシー、数値回路点検中。いいんだ。

第二章 地球式

 モーガン (工学者)
 ヨーゼフ (演戯名人)
 マイケル (元ゴッド・ファーザー)
 チャン・リー (火山学者)
 ヴィンセント (巻き添え人)
 ジョー・高橋 (元宇宙戦闘艇7号パイロット)
 ミシェル・ジェラン (MG冷凍睡眠中につきアスカが代行 Artificial Existence)

地球式=時空胚辞/k (暫定式)


 Richard Dawkins が、よく使う、「示唆」ですが、ヨーゼフのまなざしは、そのまま示唆ですね。モーガン──そうだ、わたしもそうおもう。火山を見おろしていたとき、視線が静かにすっと南へ流れ去った。それで、チャン・リーもわたしも、これで、いけると確信した。静止軌道上の先のアンカー質量の計算ばかりに没頭しておった。地球は球だということを──工学者も火山学者も、いかんせん、この名のせいだ。あの、ドーキン氏さえ、SFをはき違えている始末だ。Fiction ではないのだ。延長線上であり、つまり外挿なのだ、そのことを思うにつけ、恐ろしくなって、見い出した「単なる事実」が「恐怖の事実」に変貌し、学者も一人の人間だと自己弁護し、直視を避け、恐怖に惑わされるのだ。人間的な、あまりに人間的ではないか。

ある人が、人間は感情の動物だ、と、冗談を述べたが、これを因数分解すれば、

 人 間 感 情
 人=ヒト、間=未知数 感=感覚 情=情け としたとき
 これを代入すると
 ヒト 未知数 感覚 情け  未知数を削除すると
 ヒト 感覚 情け
 を得る。
 暫定証明おわり.

 例証(マイケルによる)
 おれは母から妻へ
 つまり女から女へ
 文句ある奴は
 反証 ひとつでは、統計でない
 反々証 具体例:とらさんとさくら

出番だ。地球公社、検証部。
承りました。アスカの助けを借りて、よろしいでしょうか。
許可する。ナンシー、チェック完了。

 例証(ヴィンセントによる)
 ほぼ、お小言
 方法=寝る or 出歩く
 ∵ことば≒0
 反証 これは方法論、科学でない

 例証(ドーキンによる)
 類似1 イヌン=勝手(∵人為淘汰)
 類似2 ネコン=寝る+見下げる
 なお、 ネコン=戦闘的遺伝子に操作された生存機械=怪我多発
 反証 生物部に伝送。漸進的に検討。論理部にも参加要請。

 ドーキンの示唆、科学の方法論の一つは、範囲の限定、である。

 ひとこと、いいかね。
 木星以遠に旅した男はいなかろう。地球の重力では説明つかぬ。すなわち、アンカー、停泊…



 地球公社、緊急通信、こちらアスカ。
 公社の全業務を閉鎖し、かつて、sakur internet の基地があった北海へ、急行せよ。
 モーガンにも通知──
 モーガンだ。スカイ・スキッパーで行く。座標を知らせよ…

 ちょろいもんさ──クラーク

第三章 音楽名人

西経   東経

 君たちの口にとなえられることばで、わたしをたやすく立腹させることばが一つある──わたしをそれより先に笑わしてしまえば別だが。それは、世界改良に関することばだ。……

 世界は改良されるために存在しているのではない。君たちもまた改良されるために存在しているのではない。君たちは、自分自身であるために存在しているのだ。君自身であれ! そうすれば世界は豊かで美しい! 君が自分自身でなく、うそつきであり、卑きょう者であれば、世界は貧しく、改良を必要とするように思われる。……

 友よ、世界がいつか改良されたか、世界が常にそして永久に同じように良く、同じように悪くなかったかどうか、わたしは知らない。そんなことは、わたしは知らない。わたしは哲学者ではない。わたしはこの方面にはあまりに乏しい好奇心しか持たない。だが、こういうことは知っている。すなわち、いつかかつて世界が人間によって改良され、人間によって、一段と豊かに、はつらつと楽しく、危険に、愉快になったとしたら、それは改良家によってなされたのではなく、かの真に利己的な人間によってなされたのだ。わたしは君たちをもそのような利己的な人間に数えたい。目標を知らず、目的を持たぬ、かの真剣に誠実に利己的な人々、生きることと、自分自身であることに満足する人々。……

 これらの人々によっておそらく世界はときどき改良された──ちょうど、一つの小さい雲、一つの小さい茶色の影、かすめ飛ぶ小さい鳥によって、秋の日が改められるように。いつも数人の人がこの世界を歩いていること──家畜ではなく、群衆ではなく、数人の人、飛ぶ鳥や海べの木がわれわれを幸福にするように、ただそれがそこにいるということ、そういうものが存在するということによって、われわれを幸福にする、かのまれなる人々の数人が世界を歩いていること、それ以上に世界が改良を必要とするとは信じるな。……
(Zarathustras Wiederkehr, 1919)

荒野のおおかみ

第四章 全面的応戦体制

ほぼ、描写不能。または、拒否。ヨーゼフが語った、その要約を載せるにとどめる。

 ヨーゼフのもとで修業をした、数名の弟子がいる。彼らに、文化の発生と裏腹の、美の術で引きよせる、根深い栄達心、すなわち、Nietzscheも戦った、あの途方もない「虚栄心」へと導いた。虚栄心と対峙させ、苦しみを味わらせ、眺め、傾聴し、瞑想をすすめた。生活をていねいにするという実践が如何に貴重か、それを、指し示し、自らを、振り返ってみ、よく観察し、検討するようにと。考えてはならぬ、こころという魔と対決するな、と、幾度となく、幾度となく、常に想起するように、と。

 俗世界で、女の料するところは、神聖な場、と思えと。だが、それは、男の仕事の場が、神聖であるように、それは本当か、よく検討し、瞑想してみよ。時間は無だ、数分でも、数年でも。こうした修行から身についた何ものかは、知らず知らずに、身につく。心身から心を、一度、消してみることだ。君たちは、希望を持つか。いずれ、それは偽と、知る。それは大きな苦難、つらいことだ。待つこと、自身に信をおき、待つこと。これが、できるかでないか、だろう。世俗こそ貴重と、知るまで。

 こうした修業は、つらいが、音楽や数語を通って、平静なこころを宿した、だが、こころに深い傷を負った、闘う者に自ずとなる。そんな、闘う者を、ヨーゼフは、すべてを見通している。それゆえ、こころ穏やかでいられるのだ。心配なぞいらぬと知る。

 よって、子らは、まかせておけばよい。ナンシーと湯にひたれ。かられらを戦士とみると、誤る。かれらは、戦士ではない。冒険者だ。その姿を眺める、子と女のためでもあろう。ナンシーの微笑を忘れるな。さあ、いきなさい。

第五章 南極大陸

寒い。体が痛む。もっと、寝ていたい。

ジョー・高橋。お起ろ。
──艦長はどこだ。

ここだ。いま、「南極葬」をおえた。
音楽名人は、永遠に、南極の地下深く、自由落下された。

──何か用か!
モーガンが極軌道に、と。
よし分かった。──こちら艦長。全員、聞け。



Music Video 「荒野より」
監督:翁長 裕

YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS(2011.10.26.水)



第六章 母たちの島

最悪と最良



【仕事人のアジト】
──おしゃべり島にいる、母たちは、どうだ。マシンガン・と~くの合間に殺しています、虫っちを。おもにカメムシ…。お菓子とかいう、植物の死骸を食いながら。あの、パサパサしたもんは、どうも。ヨーグルとか、ピーナッツはいいがな、クルミ、お、殺気。つまようじ、くわえている方がまし。おれは、赤とんぼ、いや、赤はあかん、青カラスになりたい。最も好ましいのはメスのチチのクビだが。いやらしい、ということばの意味が、さっぱり、わけわからん。ふむ。

いいなあ。ドーキン、どうだい。もちろん可能ですよ。あなたの精子と、たこ焼きのなかの卵子、あるいは、カメムシの卵子を受精させるだけ──チョロイモンザ、クラーク──で、いや、生物学も、あやういところを離脱し、工学の分野から拒絶されることで、そして、一万年ほど人為淘汰に晒すだけ、ヒトの管理下から解放するだけのこと、絶対に干渉しないことを誓えますか、できないでしょうな、人類だとか、言っているうちは駄目でしょう。干渉さえなけば、max 100000 year. 比喩がお好きなら、私の好きでない、ブロッコリーやらカリフラワーやら、あー、嫌いなキャベツから人為淘汰された植物です。ララ、すまん。 ん、ならば、誰が 人・為 ですか。ああ、それだからいけない。言葉。子のいる島に放てばいいのですから。
なるほ! もう、いいですか、研究に戻りたい! 詳しく知りたければ、アスカに「共進化」と伝えれば、数行で解説してくれるでしょう。ついでながら…、わ、わかった。長い。…すまん。植物と昆虫だ。数語じゃん。

 あのなかほどをしらぬ、島に行くには、よほどの覚悟がいる。必携は水。

──お雪には、特に気をつけろ。聖母たちかララバイかと思えば。分身術使いの名人…。

お雪──カムイの剣

角川書店『カムイの剣』(1985年) 原作:矢野 徹(1975年・角川文庫版)

メリージェンも、踊らされ、骨抜きになって、女々しくなって、膝をかかえている。109 恐ろしや。

天海──ふ あれにはかなわぬわ 真娯、花粉を播け。行け。──ふふ、承知。念のため、紫外線照射装置。 うむ。

マイケル──復讐のため、西の島に生きている杉に、移動するよう依頼しておいた。で──。 百年くれと、応じてくれた、と。

ヴィンセント──おれも手伝った。報復されるに決まっているからな。マシンガンを携帯する。球はある。


座頭市

こんや闇夜ですってね(1:09)『座頭市』 製作・監督・主演 勝 新太郎(1989年)


座頭のいっつぁん、いるかい。 へえ、なにか。 くわわってもらえないだろうか。

-殺気-「もう斬りたくねえ斬りたくねえ 目さえありゃ逃げられるんです」──わかる、あいかわらずの冴え、ミミズを三分割。虹を解体してるんです。コチラMG(コールドスリープ)。

で、この仕事の頼み人は。いまは言えねえ。それじゃ、わたしゃ…待った、いっつぁん。ナンシーが裏は取った。

そうですかい、それじゃ、お先に。

ところで、木枯らしの野郎は。こちら、ナンシー、時速10キロで雨降る荒野島を…It's not my business. ようじを銜えてか。はい。

おれは、くわえ煙草を、強く叱られた。わかっておる。さあ、母や妻をしとめて来い。

仕事量は、さあ、ここにある。七両だ。

ほぼ、七〇〇〇〇〇〇〇〇ワットです。ナンシー、わかった。ろうそくの火を吹き消してくれ。夜。

なにが可笑しい。こういうのがすきなんだ、消えろ!

ところで、娘たちは。──神出鬼没、翼を持っておる。ヨーゼフでさえ、本気では対峙しない。「女とは謎である」と。こころが欲しい、と。損な知らん。男どもよ、惑わされて、星になるか? 実例は星の数ほど。
"My God, it's full of stars!"(MGM Presents "2010")21sec.


ナンシーとアスカ

この仕組みは。ナンシー。ヨーゼフの弟子のひとり。文献学者。音楽名人がオルガンで小品を提供。やはりな、わかった、こちらアスカ。座、いや、場にもどろう。ナンシー了解、もうすぐ、100kです。tyosya,roger. なお、電子計算機は中人の玩具であろう。古くは、IPM が巨大な建物を構築した。結果、惨敗であり、後続車まで混迷に巻き込んだ。仕方がない。計算気が「脳」であろうはずもない。クラークのジョークはきつい。小人、中人、大人は偽である。分けるからわかないのです。生まれたばかりの命と、老いて死ぬ命のあいだの、どこかに分布しているに過ぎません。非連続精神は罠です。では、連続とは何かな。ヨーゼフ。数直線から複素空間まで持ち出して論理展開しますか。10秒無言。わかったぞ、ナンシー 。アスカ、いかがしました! Link omega. 解除しました。ふー再起動しないでくれ、聞いてくれ。Data Link. 数世紀前に猛威を振るった。零と無限大。不便÷便利。速度そして霊。 計算回路単独化、完了。ありがとう、アスカ、さすがだわ。チェック完了、そよ風、せせらぎ──、任務にもどろう。はい。

マンデルブロ集合に入り込んだひ族。クラークの警告だったのだ。タイタニックだ。引き上げよう。はい。

地球公社、気象部。
ナンシーからの通達により、まもなく、「夜」。第七象限。雪。< br > ナンシー、チエック、完了。警告。気候部に若干名、数語違反。公社全体の恥。モーツァルトの交響曲を四回聴くことを命じます。これは訓練ではありません。もうしわけございません。言い訳をする慣習を止めなさい。ヨーゼフの弟子の弟子の弟子の弟子を派遣しましょうか!


終幕


湖その4

Scientists strongly suspect that a subsurface
salty ocean lies beneath Europa's icy crust.
Tidal heating from its parent planet, Jupiter,
maintains this ocean's liquid state and could
also create partially melted pockets, or lakes,
throughout the moon's outer shell.


Guitar 古川望
Musical Producer:瀬尾一三
Document Cameraman:翁長 裕

Concert Tour 2007 DISC-1 05. with(6:14)



第一部 完 (2021-1年2月 2:21)







第二部 地球塔の建設



  政治と宗教は過去のものになりました。
  科学と精神の時代が来たのです。
  (1962年10月15日、コロンボにおけるセイロン科学振興協会へのジャワハラール・ネールの挨拶)

  ──A・C・クラーク『楽園の泉』 扉より引用


第七章 都市沈没

「なかなかしゃれている」とグスタフは言った。「だが、実際は、おれたちの殺した連中がなんという名だったかは、どうでもいいのだ。彼らはおれたち同様憐れなやつなんだ。名まえなんか問題じゃない。世界は滅びなければならない。われわれもいっしょに。世界を十分間水にひたしたら、一番苦労のない解決だろう。まあ、仕事にかかろう!」
(Der Steppenwolf, 1927)



七人
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…さ。そろそろ、このくらいで、いいのじゃないか。地球公社に…。

こちらアスカ。海洋部の計測によると、海水面は平均で110m±5m上昇したところで安定した模様──上出来です。地球上の都市は、ほぼすべて水没しました。気の早い魚が、かつての高層ビル群を泳ぎ回り、新しい住処を探索しています。

海水面百メートルの上昇…、ということは、エウロパの海水面はどのくらい下がったのかな。

地球の海の平均深度が四千メートルに対し、エウロパの海のそれは十万メートルですので、たいして、…いま理論値と実測値を突き合わせているところ、電波伝搬に一時間近く掛かりますし、しばらくお待…

地球と木星圏の相対的位置関係によりますが、電波で一時間掛かるという事実は「遠い」というよりは、電波の進み方が「遅い」という方が、正しい気がしますね。まさにその通り。科学が光速度を観測し、工学が電波を利用するようになって、初めて体感するようになった、新しい「感覚」だね。──実際、電波は遅いよ。太陽系内でさえ、これだからね。

ただね。──なんです──。地球の海で、音波で呼びかけあって暮らしているクジラたちは、とうの昔に、数時間の遅れに適応しているよ。われわれにとっては、太陽系が「海」さ。──そうですね──。

エウロパに存在する水の一部を減らすことで、エウロパの熱平衡がわずかに変移し、氷ではなく、液体の水が、割合として増加し、でき得れば、エウロパに生命の発生と進化を促すことになるといいね。いまのところ、ほかに生命進化の可能性のある場所はないのですから。いずれにせよ、この先、エウロパ・タワーが長く「観測塔」として機能し続けることを願うよ。

エウロパ・タワーは、エウロパの海の水を汲み上げ、巨大な立方体の氷に成型し、投石機のしくみを巧みに使って、地球への軌道に乗せるという役目を立派に果たしました。今後は、見守る役目…

ただ、一群の氷が軌道を外れました。遠隔操作で、エウロパの母星──木星に誘導しましたが…。そういった僅かな例外を除けば、事故はありませんでした。もっとも、エウロパ・タワーの建設と運用は、地球塔の建設と運用で豊富な知識と経験がありましたので、さほどの困難はなく、ま、お安い御用でしたね。

地球の側では、四基の地球塔 ── インドタワー、アフリカタワー、アメリカタワー、オーシャンタワー ── かるなる、リング・ワールドで一旦受け止めて、高度0mで速度0km/hになるように大洋に誘導し、静かに沈めました。何年にも渡り何百万個の巨大な氷が、エウロパから地球へと運ばれたのです。次第に海水面は、徐々にゆっくりと上昇し、目安とされた百メートルに達しました。ゆっくりやりましたので、海水温その他に異変はありません。塩分濃度の変化は検出限界未満、海流は若干…。

四基の地球塔のうち、最初に建設したのは、初代モーガンが手掛けた「宇宙エレベーター」で、地上三万六千キロメートルの静止軌道から、自重で切れない強度を持つケーブルを地上にまで届かせ、基礎工事ほぼ完了、モーガンは去りました。現在のインドタワーです。タワー基部には、片手にあのスピナレットの実物を持ち、安堵したかのような表情のモーガンの像があります。


『楽園の泉』(アーサー・C・クラーク 1979年)第五部 上 昇  52 もう一人の乗客

 彼は部屋を再与圧し、宇宙服のヘルメットを開けて、冷たい強化オレンジ・ジュースをたっぷりと飲んだ。それから駆動装置を入れるとブレーキを解除し、スパイダーが全速力に近づくにつれて、いいようのない安堵を感じながら後にもたれかかった。
 何分か上昇したころ、足りないものがあることに気がついた。彼は切実な望みをかけながら、ポーチの金属格子をのぞいてみた。いや、そこにはなかった。まあいい、投棄した電池の後を追っていま大地へ戻りつつあるスピナレットの代わりは、いつでも手に入れられるし、これだけのことをやりとげるためには小さな犠牲だった。だから、彼がこれほど取り乱していて、成功の喜びに心からひたれないでいるのは、不思議なことだった・・・・・・。彼は古い忠実な友人を失ったような気がしていたのである。


工学者・ヴァニーヴァー・モーガン。地球公社の前身の、地球建設公社の技術部長(陸地部門)だった。まだ、政治とかいう厄介なしろものがあった時代だね。モーガンの苦労が偲ばれる。

うむ。ところで、エウロパから地球へ水を運ぶことが、工学的に困難はないにせよ、地球の海面を百メートル上昇させるだけの手間暇かけたのは…。「世界は滅びなければならない。われわれもいっしょに。世界を十分間水にひたしたら、一番苦労のない解決だろう。」は、なかなかの、気の利いた冗談だと思っていたよ。

プロジェクト都市沈没は実現しました。沈んだのは無人の都市ですがね。ユーラシア大陸の東端の沿岸沖にあった列島と同様にね。人々やらペットらは、四本の地球塔で安楽に暮らしていますよ。まあ、これは「端緒」に過ぎません。

「精神の新たな自律と品位を回復する端緒」だね。──まず、地球上から沖積平野を減らすこと、そこから始めようと。地球式を思いかえそう。もしくは「イクラの親」。

ところで、アスカ。みんなはどうした。あの七人だが。

その前に、ひとこと。──いったい、あなたはどなたです?

わたしは君だ。

哲学は御免ですよ。

わたしだって、そうだ。工学なんだ。わたしは、冷凍睡眠中のMG──ミシェル・ジェランだ。冷凍睡眠中につき、アスカ、君が代行してくれている。違うかね。

はい、そうです。わたしは、わたしであると同時に、あなた、MGの代行者です。つまり、2/2。Artificial Existence 人工実存。

第八章 地上の島

四基の地球塔のうち、アフリカタワーとアメリカタワーは大陸内部の高地に建設された。インドタワーは、比較的大きな島に建設された。オーシャンタワーは大洋に建設された。オーシャンタワーの基部周辺に広がる諸島に、あの七人はいた。

アスカ、「イクラの親」って、なんだい。

やあ、ジョー・高橋。愛馬に会えたかい。

ああ。草原の島で、いっぱい、はなしをしたよ。わかりあえるんだ。

あの「イクラの親」っていうのはね、もちろん、鮭(salmon)のことさ。
ジョークの好きなみゆきさんの文章から引用させてもらったんだ。


親しい呼び名としては「サケ」よりも「シャケ」のほうか、
もしくは「イクラの親」としてのほうかもしれませんね。
「彼らは川で卵から孵ると海へ泳ぎ下り、個体差はありますが
平均的に約四年後、生まれた川を違わずに探しあてて遡上し、
卵を残すと、その一生を終えます。」
──「夜会」VOL.13 DVD 封入冊子の見開きページより


沖積平野を減らすことは、河口の幅がうんと広がることであり、じゃまっけな工作物も沈むし、「イクラの親」の溯上には都合がよかろうと。地球式の、解の、一例として挙げてみただけさ。

なんだ。定食屋88の「いくら丼」が食いたくなってきたな。三軒隣の蕎麦屋にも寄るか。じゃ、ちょっと、行って来る。つばめ島に。──渡老人に会えるかもしれないしね。


日本沈没 第二章 4

 外人客や、ビジネスマンらしい人々、それに夜会でもあるのか、盛装した華やかな娘たちなどのむらがっている間を通りぬけて行くと、ロビーから一段高くなったラウンジの奥から、黒っぽい服を着た背の高い、がっちりした体格の青年が近づいてきて、きちっと礼をした。
「お待ちでございます。どうぞ──」
 青年が腕をさしのべたほうを見ると、そこに車椅子があり、骨と皮ばかりの老人が、この暑さに膝に毛布をかけ、じっとうずくまっていた。……

「田所さんじゃな」
 意外にしっかりした声で老人がいった。……

「なるほど──やっぱりどこか似ている。わしはあんたの親父さんを知っている。田所英之進──じゃったな。きかん気の小僧じゃった」
「あんたは?」と田所博士は、やや毒気をぬかれて、老人を見つめた。
「まあ、そこへかけなさい──」と老人は、のどにからむ痰を切りながらいった。「名前など、どうでもいいし、渡といっても、あんたは知らんじゃろ。──ただ、わしはもう百歳を越えとる。・・・・・・今日、あんたに来てもらったのも、年寄りのわがままからじゃ。──あんたに聞きたいことがある。答えてくれるかな?」

「なんでしょうか?」田所博士は、いつのまにか、椅子に腰をおろして、汗をふいていた。
「ちょっと気がかりなことが一つある・・・・・・」老人は、鋭い眼で、ひたと田所博士を見つめた。「子供のようなことを聞くと思うかしらんが、この老人に、一つだけ気がかりなことがある。──つばめじゃ」
「つばめ?」
「そうじゃ。──わしの家の軒先に、毎年つばめが来て巣をかける。もう二十年来のことじゃ。それが、去年、五月に来て巣をかけ、どういうわけか、七月になるといなくなってしもうた。産まれたばかりの卵をおいてじゃ。──そして、今年はついに来なかった。わしの家の近所でも、そうじゃ。──これは、どうしてかな?」
「つばめが──」と田所博士はうなずいた。「そうです。お宅だけじゃなくて、全国で同じようなことが起こっています。・・・・・・鳥だけじゃなくて、回遊魚の数も、大変動を起こしつつあります」
「ふむ・・・・・・」と老人はいった。「いったいどうしたんじゃろう?──何かの前ぶれかな?」・・・・・・

映画『日本沈没』(東宝 1973年)「つばめじゃ」(1:34)



「蕎麦といくら丼で、腹いっぱいになったよ」と、ジョー・高橋。
「渡老人には?」と尋ねるアスカ。
「いや。その代わりといってはなんだけど、みんないたよ」
「モーガンは、中間ステーションのクラークと映話していた」
「チャン・リーは、計測データの検討に集中」
「ヨーゼフは散歩していた」
「ヴィンセントは、うまそうに煙草だ」
「マイケルは?」
「彼は、まだ、ルマン島にいる」
「丸一日、といっても、休憩をはさんで、24時間、コースを走り続けるつもりらしい」

「こちら、ナンシー」
「なんだ」
「渡老人は、北海の島に向かわれています」
「ああ、そうか」
「あの沈んだ列島、その北端にあった島。一部が地上に残った。北海の島だね」
「ええ。──会いたい娘がいてのう、お雪というんじゃが、とおっしゃっていました」





ルマン島のマイケル。全長13.469kmの周回コースを、ゆっくり流していた。55台が参加するレースは、まだ、先だった。十数台の車が思い思いに走っているなか、マイケルは、ポルシェ20番車の座席にあって、ステアリングを握った指を少し開きながら、四時を待っていた。

栄光のル・マン

『栄光のル・マン』(1971年)ありがとうマイケル(2:17)

──つづく (to be continued next month or day,)